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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
暖いこと。でも羽織をぬぐと風邪をひきかかるような工合。そちらの御工合はいかがですか。きょうは二十二日ね。三日、四日に岩本の小母さんが来られて、五日に立って、六日について、七日。七日。七日。
沢山歩いたりして疲れている故か眠いこと。この頃皆つかれて大抵九時半というと一斉消燈です。六時前もう、御免なさんしと云って来る人もある。朝、駅から電話がかかって、二十六日の「さくら」の場席がとれました。多賀ちゃんはお母さんの持っていらっしゃる襦袢を縫っている。私はさっき下で、お母さんがあなたへお土産とお買いになった純木綿の浴衣を裁って、二階へ来て久しぶりで海老茶色の本をひろげました。そして六十頁ばかり読んで、一寸一息入れたくなってこれをかきはじめたわけです。明日冨美ちゃんが来るでしょう。明後日は岩本の小母さんが見えるでしょう。二階にいられる時間がなさそうですね、私は笑われるかもしれないが慾ばりでこんな本よみかけ一冊、つづき一冊、二冊も持って来たの。一冊読了することさえ出来るかどうか。今ではこの本も親しさが加っていて、長い本をよむときの気持の持続性が生じていて、日常生活の気分と平面が同じになって来た感です。