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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

ドイツの文学史は知らないけれども。ゲーテ賞を(ノーベル賞なんかナチの文学者は受けるに及ばん。ゲーテ賞をやる、ということで)貰ったカロッサにしろ、医者として或点大変リアリスティックですが、いざとなると、永井潜先生に近づき科学と宗教的なものとをまぜ合わせてしまっている。フランスが文学に於て示したリアリスムの力づよい歴史的な功績と比べて面白い。

今この部屋のスティームの上に、私の腹帯が乾してあり、その上にお正月用にお送りしたと同じ手拭がほしてあります。この手拭はスフ三分混紡で、今にこれでも珍しいものとなるわけですが、使って御覧になりましたか? ちっともさっぱり水が切れません。スフは赤ちゃんの皮膚を刺戟してただらすので、この頃お母さんになる人たちは、古いものでも木綿をきせたいと大努力です。私の腹帯にしろ、晒木綿は貴重品、こうやって大切に扱う次第です。

どこかで鳥が囀っている。外かしら、それとも室のどこかで飼っているのかしら、チュチュンチュンチュンと囀っている。それともどこかの籠から逃げたのでしょうか。何か気にかかる。

あしたの晩は三週間ぶりで、我が家の机の前に坐れます。