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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
茶ダンスの上には、特にお母さん御用に買った鏡が立っていて、タオルねまきの新しいのもかえて居り、布団もまるでポンポコなのが出来ていました。一安心いたしました。
二十五日の夜は、何しろあした顕さんに会おうというのですからぐずぐずしてはいられない。お風呂にお入りになり御飯がすみ、九時には床に入りました。寿江子留守にはよくやってくれました。
二十六日は御承知の通り。私には、ああやってテーブルの上に組まれているあなたの手の眺めなど、何と珍しかったことでしょう。いい爪をしていらっしゃるのでうれしく思い、一つ一つの指の爪についている白い半月形をまじまじと眺めました。私は両方の親指のところに浅い半月形があるぎりですもの。ちっとも爪には条が立って居りませんようね。それも何よりです。
あれから私たちは、日本橋の方へ出ました。毎日のことは、一々お母さんのお話で伝えられて居るわけですね。本当に活動的で、うちにじっとしていらっしゃるということはありません。そちらのかえりずーっと引つづいて夕刻の七時八時近くまで次から次へとお動きになります。御丈夫ね。私の方が、折々フーとなって、ああ盲腸がなくなっていてよかったという位。