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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

、そんなことを云っている夜のようです。さもなければ、何かの漫画見てハアハア笑って、「一寸ぜひこれを見て頂戴」と云って、「バカだね」と云われて、たんのうした顔しているような。明日から書くものについての頭の内でサーチライト動かしつつ、一面でこのような気分。緊張していて、ゆれていて、それでいてあるゆとり。ゆとりの只中で絶えず或ところへ集注しているもの。目の中に独特のこまかいつや。では又明日。ねむうございます、八時だのに。

六月十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

六月十日  第四十九信

まだセルが届きませんでしたね。いそいで羽織ひっかけていらしたらしく、エリのうしろが折れずにいるのが見えました。どうか早く寝汗だけでも出なくなるように。

さて、ひさは八日の夜八時半、出発して国へかえりました。おめにかかる折がなかったけれども呉々もお体をお大切にと云ってかえりました。稲ちゃん、栄さん、林町、うちは勿論それぞれ心づくしでお土産もらいようございました。「かえるような気がしない、又あしたかえって来るような」と云って出てゆきました。寿江子が来て泊ってくれています。