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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
もうすこし経つと咲枝パンクで入院ですから人手たりなくなるし、私が留守いをしてやらなければならなくなるから。予定日は九日だそうです。咲は、太郎のためのみならず、ちゃんとした人がいてほしいのです。それがよくわかるし、ほかならぬお産のことですから、私も我マンしていてやります。国男はお産のときそばについていてやれないのですって。そわそわしてお酒のんで、ちっとも酔わないで、ウロウロしているのですって。全く古風です。お産をするおかみさんの手を握っていてやれないなんて、ね。
この間、法政の新聞に『ミケルアンジェロ』のブックレビューをかきました。そしたら五郎氏からミケルアンジェロの「奴隷」のエハガキに細々とかいたお礼頂きました。ノートとっては勉強する人の字はこんなにこまかく書く癖がついているのでしょうか、蠅の目玉よ。殆どエハガキの下の細かい印刷文字と等しい。よむのさえ大変。よくよく目がよくなくてはかけまいと笑ってしまうほど。私と私の愛するかたの健康と幸福とを祈るとあります。私の愛するかたと云えば、つたえるべきかたは一人しかないからおつたえ致します。この著者には前に福沢諭吉、新井白石の伝がありますね、大教育家叢書とかいうなかで。