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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

いろいろの用事、比較的順よくすんでいること、おわかりになっているでしょうと思います。慰問袋も二つ、島田への羊カン、多賀子へのイニシアル入りのコンパクト、皆すみました。白地の着物、白麻の肌襦袢なども、土曜早朝送りました。かけぶとんは二十日ごろ出来上りますから、それから。白地のつつ袖のねまきの方、あれは島田で、布地を買って縫ったものですが、あの時分書いた手紙お思い出しになるかしら。あの着物の胴のまわりのあげは、ユリが縫った話。魔女が自分の大切なものをいつまでも自分のところに止めておこうと希うときは、その愛するものの体のまわりに環をかくこと。二つの腕でだって描くのは環ではないの、という話、そんな話、お思い出しになるかしら。もし忘れていらしたら、サラリとしたのをお着になったとき、思い出して下さい。そして、その環へ祝福を与えて頂戴。

今年の夏は、例年より誰にもしのぎ難く思われるそうです。どういうわけなのかしら。

ユリも申すまでもなく、実に流汗淋漓ですが、その汗をふきつつ、汗をふいていることもつい忘れるような深い真面目な、感動にみちた朝夕を迎えて居ります。益※(二の字点、1-2-22)深く深くとあなたに眺め入り、今更精髄にうたれます。