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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
でも本当にこうやってのんきなこと話して生きていて、妙ね。何日ごろになるか、初めてお目にかかるとき私は手をとってほしい気持です。お辞儀をして、さアユリは死なずに来てよと、そういう気持です。〔中略〕この間入院する前は、二階の勉強机でない方に、ベッドとの間においてある椅子にかけて、いくつもの手紙かきながら、もしかしたら死ぬときになっていたのかと考えた。だって、私としたら珍しく万端すんでいて、あなたにあんなに連作の手紙もかき、心持はしーんとしてしまって滓のないような工合だし、着物はすっかり新調して上げてしまってあるし、お金のことまで打ち合わせたりしてあったし、いやに準備ととのっている。よく偶然そういうことがあるものだから、成程こんな工合のこともあるのかと考えて居りました。そのために却って手術の間も心持は平静でした。〔中略〕然し、ハラキリはこたえるものですね。〔中略〕
明日入浴出来たら七草までにかえれるのではないかしら。
二十八日にちゃんとお顔を見てつたえることが出来なかったので気になっていますが、そちらの元旦はいかがな工合でしょう。臥ていて、余り安らかなおだやかな、底によろこびの流れているような心持のとき、きっとやさしい親切な心で思われているのだと感じます。