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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

二十一日に行ってシクラメンの大きい賑やかな鉢を二十三日のために入れようと思っていたところ、福寿草が咲きかけでは可哀想故、おっしゃるとおりに致しましょう。その代り今寿江子がこれをかいているまわりで大いに美術家を発揮して居ります。光子さんがいた間にもとの家の一寸見える二階の南側のスケッチをして貰ったら、何となししまりのないのが出来て感じがないのでお送しないでいた。寿江子を動員して見たら、マチスのコムポジションに似たようながら面白いのが出来そうだからやって貰っているところです。どんなのが出来るかしら。前にお送りした室内風景ね、あれの南側の面になる分です。

さて、養生のこと、勉強のこと、事務的処理のこと、ありがとう。体に力のないというようなのは一目でやはりおわかりになるのね。大抵のひとは、私の血色がよいし、活気も一通りあるのでだけ判断する。自分では血色や何かにだまされてはいず、力のない感じの方で生活を計っているから御安心下さい。気分はおだやかで、追々夢も減って来て居ますが、この力の充実しない感じは微妙で、ちっとも戸外へ出たくない。十七日に家から出たぎり。