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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
と云われました。室で、籐椅子二つつないで脚をのばし、半ば眠りながら十二日の朝のこと思っていたら、下で急に赤坊のいかにも威勢のいい声がしました。よその赤坊と思って二声、三声きいていたが、下に室はないこと思い出し、いそいで階段口へ行きかかったら、バタバタ下から駈けのぼって来た看護婦が「御安産でございますよ、お嬢さまでございます、お二人ともお元気」と云ってものをとりに行きました。「ああよかった!」思わず声に出して「何てよかったんだろう! 本当によかった!」そういって電話室に入り、国男呼ぶのがなかなか出ない。ブズーブズー、二十分もして出ました。生れたこと云うと、妙な咳して「よかったね」と云っている。折から赤坊又泣き出したので、電話室のドアあけて「きこえるだろ、あの声がそうよ」ときかせてやったら、又咳払いのようなことして「ああ。ああ。」と云っている。そういう風になるのね。五時二十分に生れました。ですから陣痛が高まってから三十五分ぐらい。家を出てから二時間余。あやういことでした。自動車の予約がなかったら大あわてのところ。「百合ちゃん来てくれて、よかったよかった」