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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
見て見て見て、眼玉が痛くなるほど見て、まあざっと、これで堪能したという思いがしてみたいものです。
今夜私たちがこうしている空に、サーチライトが動いています。九段の大祭ですから。黒紋付の女のひとがどっさり歩いています。若い女のひとが。山高なんかかぶったお父さんにつれられて。赤ちゃんを抱いたのもいます。春お母さんと日光に行ったときも随分どっさりいて、一つ汽車にものり合わせましたが。
又明日あたりからずっと忙しくなります。『中公』の小説のりました。二ヵ所ばかりブランクが出来たが。
日本の過去の文学が、情痴は描いて、愛の表現というものには乏しかった。今日の所謂大人がその高まった情感を理解しないことは日本の文学を実に低くとどめる外部の力としてあらわれています。或る見かたをする人々は、そう見るということで内面の低劣さを告白している場合が多いのだが、ビュロクラティスムにまもられると、そういうはずかしさも感じないということになっているのでしょう。徳川時代の文学のゲラゲラ笑い、その系列が、感情生活の中にのこっているのね。
『新潮』の正月号の小説はごく短いものですが十一月十日で〆切ります。