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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
黄菊が(私の買った)マジョリカの大きい壺にささって、これは茶ダンスの上に。
珍しく三夫婦そろいました。てっちゃんと。三組の夫妻が揃うということはなかなかないのよ。これまで。芝居の方はなかなかはぐれていたのです。いろんな話で賑やかですが、しみじみ思ったことは、みんなそれぞれの暮しが大変なのね。マア一番栄さんのところが波が平らというわけで(サラリーマン故)あとは小さな舟が上ったり下ったりという工合です。だから、どこかこんごのことに気をとられているところがあって、それも新しい、本年の印象でした。
てっちゃんの奥さんはかえって来た由で、結構です。ニャーニャとさし向いというのが三ヵ月つづいたわけで人相が変っていたから。よかったことね。経過もいいそうですから。子供が、一日は父さんをひとみしりした由。太郎には話の中で、度々アッコおばちゃんのおじちゃんが出てわかっているのですが、会ったらきっとはにかむわね。太郎は、はにかみのひどい方ですから。太郎カナ字がよめるのよ。いつか林町へ手紙下さるとき、太郎あてにごく短いカナの部分をかいてやって下すったら、きっとよろこぶでしょう。