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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

だから或る年齢以上になると、そういう根本的なことについては、何年も前にやはり似たようなこと云っているというようなことが(日記などで)出て、しかも内容は同一でないから面白い。去年の手紙思い出しては、何となく愧じ入っているところのあるのもなかなかいいかもしれませんね。いかが?

十月二十六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

十月二十六日  第九十九信

雨のなかを、昨夕は真くらで、新宿辺は珍しい光景でした。通行人は皆傘をさして、傘をさしているというばかりでなく足元をさぐりさぐり歩いていて、地下道(駅)の中でだけいつもの東京人らしい表情と足どりとで歩いている。そのちがいが何だか印象的でした。午後六時ごろそんなところを歩いていたわけはね、珍しく「むさしの」を見たのです。「少年の町」Boy's town というのが見たくて。アメリカで一人の牧師が保護者のない少年たちをあつめてコロニーをつくっていて、そこでまともな社会人としての成長をたすけてやっている、実際あることです。それをその事業の記念として物語化して映画にしているのだけれども、前半は、自然で面白く後半はメロドラマ的にしてしまって安価です。