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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
ユリにもう一押しというところが欠けているように思われるが、というあなたの言葉は一度ならず云われていて、その都度そのときの理解一杯のところでは考えていたが、それも今にしてわかった、というところがあります。人間の成長は何とジリジリでしょう。そしてリアリスティックでしょう。
きょうは曇りました。火鉢なしでこれをかいているとテーブルの木肌がひやりとします。テーブルの上には友達がくれた桜草の鉢と紫スミレとがあってあとはキチンと片づいて居ります。そろそろ勉強の気分で。
中野さんのところの赤ちゃんは二十七日が生れる予定日だそうですが、重治さんはまだ一本田です。お父さんを金沢の病院に入れるためにいろいろやっているそうです、病気は老年との関係でしょうが、手術を必要とする摂護腺肥大で癌のおそれある由。泉子さんは大塚の病院で生むことにしてあるそうですから安心です。おそい初産ですから注意がいります。
あなたの風邪、どうぞ無事終了のように。こちらから、ただそういう表現でしかあらわせないから。毛糸のシャツ着ていらっしゃいましたが、あれは今召したらもうすこし寒気がゆるむまで脱いではひきかえしますね、きっと。