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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
思い出します。あのときのてっちゃんの顔は咲枝も寿江子もよく云います。そういう顔でした。てっちゃんにはそういうところがあるのですね。自分が家庭生活を落付いてやるようになって、そういう面が素直に流露するようになって、友達としてもうれしゅうございます。あのひとの親切な心は勿論、ね。お母さんも思いがけずにおいででさぞお気分が変ったでしょう、ようございました。
この暮は自家用車のガソリンは配給なしになるそうです、国男テクシーになるわけです、父は五十すぎるまで電車にのって往復していたのですものね、国男なんかそれで結構です。石炭と炭については、消費組合の配給でどうにかやってゆけそうですから、ユリの寒天曝しは出来ませんでしょう、気をつけて大事につかっているし。いろいろの物が極度に足りないのも或意味ではいいのでしょう、初めての経験なのだから一般には。風邪をひかないように病気にならないようによく気をつけて暮さなければなりません、これこそ大事よ。アスピリンやキニーネ丸はないのですから。
表をかくはずですがきょうは御免を蒙ります。どこか近所の家でアコーディオンをならして、「会議は踊る」