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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
六十二頁(ああいやね、私はこんな小さい数字をかくとき、理由がなくよくばり性が出て、つくづくいやと思う。でも、ここまでためるのは点滴風なのに。)読書力の範囲というか歯というか、よわいことね。これは全く歴代の作家たちの弱点です。今よんでいるところなんかはね、逆な形では、中村屋の主人、黒光女史なんかには実に実によくわかりやすいのです、きっと。生活感情の土台の廻転度数だから。何て腹立たしい可笑しさでしょう。
きのうから十日朝まで私は一人になります。藤江、休みをとってかえっているわけです。昨夜寿江子が来て、とまっています。
きのううかがうのを忘れてしまったが、茶の間の写真いかが? 届きました? 何て御挨拶いたしましたろう。ねえ、これはあの長火鉢よ、そう云ったでしょう? それともまだ、そこの室までは行けないでどこかで窮屈がっているかしら。私はこんな心持を感じるのです。ここにある。あけて見られる。でも見ないでいる、そういう子供らしいようなたのしんでいる心持。それから又何だかかくれんぼして、二人でどっかの隅にかたまってかくれているときの心持。そんな面白さ。そして私は自分の顔が暖いもののそばにあることを感じるの。