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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
06 一九三九年(昭和十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页
。感じとしては非常に直接だから、きっとおわかりになるわね。この気持の裡には、よろこびがあるのよ。
午後三時ごろ速達でうつしものが届きました。して見るとお金の請求がそちらへ行ったのかしら。
きょうは、林町の方へひさを手つだいにやったので夕飯は寿江子と二人。林町、家が古くなって土台があやしくなって来たのを機会に、玄関を入って西洋間へ入るところをすっかり直して明るいホールのようにし、食堂の床は板にして椅子にすることにし、土蔵や洗面所の方もすっかり手入れしました。まだ半分で、明日二階で式をするためにはいろいろ一先ず形をつけなければならないので人手不足の由。私が十四五歳の頃からそこにいて初めての小説やその次の作品や丁度あの『一つの芽生』という本に入っている位までの作品をかいた茶室風の部屋も、これで未練なく消えてしまったわけです。寿江子はちょいちょいフランスの詩などを読んで、それに曲をかいています。二階から夜下へおりて行って、お茶をのみながらそんなのを読むと、文章で云えば小品文のおけいこですが、単純で未熟だが、やっぱり興味があって特別な心持がします。プーシュキンの詩が、その北方的なものが一番ぴったりすると云っている。