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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

色のついている夢は、視神経が眠りきらないときに起るのですってね。成程とすっかり合点がゆきました。私たちのように視覚の活動がはげしいものは、過敏な折もあって、色付の天然色夢を見るわけですね。何も気違いが見るというのではないわけです。誕生日に下さるものお考えがつきましたか? 本年は、本当に万年筆を買って頂きましょうか、私の愛用ヒンクスウェルズの金Gはもう入らないのです。だからこんなに減って頭のなくなったのでもつかっている次第です。万年筆の先は堅くて弾力がなくて手くびがつかれます、そうではありませんでしたか? 万年筆でも買っておいた方がいいのかしらと本気で思案中です。割合暖い夕方ですね。又明後日に。

一月三十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(自宅茶の間の水彩画の絵はがき)〕

よごれるかと思うと惜しいけれども。これが茶の間。おなじみの長火鉢。おなじみの茶ダンス。奥の棚の上の青い葉は、琉球の「虎の尾」、うしろの絵は『冬を越す蕾』の扉絵です。

右手のガラス障子の上の欄間には光子さんの描いたレンブラント風の色調の女の肖像がかかっていて、茶ダンスのこっちは、やっぱりおなじみのタンス。