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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
私は自分が命をひろって、生命をとりもどしたとともに、一層生活の真の意味にふれてゆく折ともなっていることに大きい仕合せを認めます。
妻としてもそうよ。私は意気地なしのところもあって、いつも御心配をかけすまないと思いますが、それでも様々の経験にうちこんでゆくだけには、その程度にはいくらかのとりどころもあります。まともなものにこたえるこだまは心のうちにあります。それによって、私が益※(二の字点、1-2-22)深く感じる信頼こそ生活の柱だと思い、私に対して、私が抱くほど確固としたものをおもちになれないにしろ、やっぱり歩いてゆく姿の、その一つの姿はいつも見ていて下さるのですし。
この頃何かにつけて思っていたことなので。そして年の移るにつれて人間が仕合せと感じることや、その動機が深められ、一層謙遜に評価するようになるのも興味あることだと思います。
六月一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
六月一日。六月になりました。きょうは、雨つづきの間に時々晴天になるあの日よりで風もふき、家の中の湿気がいくらかとれるようでいい心持です。
二十八日のお手紙きのう朝九時十五分頃定例によって出かけたとき頂き袋に入れてもらっていて、くたびれを感じると、あれがある、とたのしみにして夕方よみました。