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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
この頃新建ての貸家は水道ガスなしですが、それで八、四半、三位で四十円以上です。大したものです。どうして暮せているかと思うほどです。
森長さんには土曜日に届けられます、支払うべきお金があるなら知らしてくれるよう申そうと思います。
動坂の方をまわってかえったときぐるっとあの家の方を歩いたら、やっぱり樹かげをガラス戸にうつして家はありました。そして、大学生(どこかの)がかえって来て、小さい子がおかえんなさいと反対の方へかけ出して行きましたが間借している様子でした。昔のわが家というものをそとから眺めるのは不思議な感じね、すっかり面変りがしていますから。目白もそうよ。
六月十日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
六月八日
六月二日と四日のお手紙をありがとう。細かく、そして私の病気の状況をよく思いやって考えて下さり、本当にありがとう。どんな養生にも技術上の点があってそれに習熟しなければ、やはり十分よく病気を直したと云えないことはわかります。そして、病人が、自分を甘やかしたり医者に甘やかされたりすると、決していい癒りかたをしないことは世上の例ですから、私として、あなたのつけて下さる点が、単純に辛すぎるということはないのよ。