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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
ひどい作品は書きたくないし、何かの目的のために、人生を歪んだ鏡に映すこともこまるし不可能ですが、自然にかいた作品が今日らしいいろいろなものの中に伍してあつめられ、発表されてゆくということは避け難いでしょうと思われます。
多くの作家が現地へ行って来ていることは、文学の上に面白い結果を起しています。みんな(下らない文筆屋は論外として)文学への新らしい愛着、文学とビラとのちがい、文学の精神の恒久性などを感じ直している様子です。一層文学のよさ、文学の文学らしさを求めるようになっていて、これには当然心理的なリアクションがあり、それが又彼等の伝統による情緒性へよび戻して或る意味では退嬰にも近づくのですが、精神と心情の誇張ない稠密な美への憧憬がつよく起っています。ひところ、文学の仕事をするものは、彼等の神経質さと、社会的未訓練から亢奮して、心の肌目の荒びた、強引な、力声と称する蛮声をあげ(詩人はまだその時期にいるが)ましたが、この頃はいくらか平正心に戻りかかってもいます。それに、一つああいう文学者の集団で、企画的活動をしている人というのが、何というか、つまり、体のマメなわりに頭の刻みめは浅いというのが、いずこも同じ例でしかも、総元じめの場所に制服をつけている人は、文学を方便以上に理解しなかったりして、企画に悲喜劇を生じる