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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
いたちはいたちで猫でも虎でもない動きかたをするのは知っていると思います。わたしは、お喋りでなくしていて、落付いた気分で居ります。喋ることで流れの方向をどうしたいという気ももっていず、そうなると思わず、あくせく書いてたつきを立てようという※(「火+焦」、第4水準2-80-3)った気分も無くていれば、無用の叩頭も不必要で、そのためにはこの間の小説の経験が大いに役立ってよかったと考えている次第です。あの経験から、心のきまったところが出来ましたから。先の入院の前後の心理と今の気持とのちがいには種々まだお話していない原因があり、それはやはり何か意味があると思いますから、この次に。(価値ということではないけれども。)それにつけても、どんな工合でいらっしゃるでしょう。メタボリン送らないでいいでしょうか。隆治さんの赤痢の話は、岩本のおばさまが、赤痢だったそうな、とおっしゃってでしたから。アミーバでしょうから又ことし発病しまいかと気にかかったのです。長くなりすぎましたからこれでおやめ。
七月二十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
七月二十一日、きのうは、本当に安心し、その前何となし眠りにくい夜を重ねていたので、半分ぽーとしてかえりました。