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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

このおばあさんはしっかりもので、父は大学になっても朝風呂のために(この人が入る)手から血を出して水くみをした由です。祖父は父に早くわかれ、この母に育てられ、丁寧に仕えていたのでしょう。息子より長命して九十歳近くまでいました。あなたは北の地方の炉辺を御存じないわけね。そのぐるりの光った黒い板の間の様子なんかも、ね。このおばあさんは、或る天気のよい秋の日、午後から近所の松林にきのことりに出かけ、面白くどっさりとって来て、それを夕飯に豆腐と一緒におつゆにしてたっぷりたべて風呂にも入り、やれいい気持と横になって体をのびのびとさせたら、いびきかき出してそれなり、という大往生をとげた由です。

(前のつづき)

ロシアのきのこが、お伽話の插絵そっくりに水色、朱色のがあることお話ししましたかしら。塩づけになって居ります。大きいビア樽のようなものに入って、塩漬キューリと並び、燻製鰊の下にあるのが普通の光景です。オランダ派の室内風景なんかには色彩が面白いでしょうが、日本の人にはこわいのよ。朱や水色のきのこは、何となし手が出ません。すこし上等の料理には茶色の丸っこい松露のようなマッシュルームをつかい、これはもう世界共通のありふれたものです。