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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

「二十年」は書けるわけです。「伸子」の発端から云っての。

あれにつづくすぐの時期から出発位までは一つの区切りとなります。その先の五年が一つの区切り。その先の二三年ほどが一かたまり。少くともこの位の群像はあり得るわけです。この間の手紙で云っていた部分は、飛火した大火事の口火めいた性質のものだったのですね。伸子と作者との間には前篇になかった大きい距離があります。中篇的作品の集積とはしないで、はっきり長篇の構成をもってかいてみましょうね。

「伸子」は建てましの時を予測して柱(骨組)を建物の外側に出したまま歳月を経た建築物のようなものですから。テーマは終曲を奏していないのですもの、本質的にね。おっしゃっていたとおりです。しかしそれは分っていて、分らなかったのね。(かかなかったところを見ると)

鳥籠のあとへ来るのは、針金のかごではないがやはり一種のかごで、しかも其はまとまった形をととのえていず、歪みそのものが語っているものの多い事情です。

伸子が小さいエゴイスティックな生活防衛の生きかたに堪えないように、伸子はその空虚な女でも男でもないような事情に耐えなかったのは、追求される価値をもっています。