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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

この間の随筆集の中に十三年に書かれたもので、単純も複雑もくそくらえという気になっている。自分はこれまでひとに可愛がられて来た、それが侮蔑として思いかえされる、というようなところがあったでしょう? 短いがおそろしい文章であると思ってよみました。

三十日(十月)に栄さんのところへ一寸より、原稿紙とインクかりて行った由。わけも一言「くれない」のつづきと話して。しかし「くれない」のつづきではないのです、質がちがう。馬鹿なこと(男の側)にしろ、あのときは一つ通ったものがあり、女の側に真摯な向上の欲望がありました。今は女のひとの中にもひどいすさみがあり、それを癒し立て直るのは実に大事業です。

主人は大あわてで(そうでしょう、あのひとをおとりに金を借りたおして、月小遣だけ五百円いると会う人毎にふいていたのだから)下らない出入のひとに喋りちらしているのに、卯女の父さんや私には、栄さんはもとより一言の相談もしないのよ。力をかりようとしない。そういうのです。

酸鼻という感じがいたします。中学三年になろうとしている男の子、六年の女の子、九州から来ている十九かの娘(はじめの結婚の)その人たちはどんな気がして暮しているでしょう。