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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
そして、ああいう風にはもち上げなかったでしょう。
人間の性格というものはそうそう新奇になりません。刻々に変り広大となるのはその関係です、現実的利害による関係です。小説は、将来、それを十分こなし得る作家を求めているのではないでしょうか。
散文というものは、タンサン水のように、その中に生活の炭酸性の泡をどっさりふくんだ強壮なものであるべきです。ヨーロッパ(フランス、イギリス、ドイツ)の散文は、十九世紀に其がもっていた剛健さを失って来ています。ブロックのつみ重りではなくて、曲線的になってしまっています。それは新しい生命力をとり戻さねばならず、其には人間の関係についての強壮さを(理解の)もたねばなりません。バルザック以後の、ね。
だから、アメリカの散文がこの国の若さを自然に反映して、ある瑞々しさをもっているのは面白く思えます。
しかしこの強壮さは、謂わば若いから丈夫だという人間の生理的な状況のようなもので、それだけではたよりのないものです、どんなにふけるか分らないのですものね。
日本の文学的伝統における散文の力とはどういうものでしょう、この見地から見直すと、漱石の散文は秋声よりも弱いと思います。