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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
あなたの顔を、よくよく眼のなかにはめこませて下さい。そこには私の疲れをやすめ安心を与え、同時に気を確かにさせ、すべてのよい願を恒に清新にするものがあります。
追伸
レントゲンのこと、これも終ったかは恐れ入ります。
今年の冬はどこもスティームなしですから予防会へ行って、今どうもないのに、寒いところで体を出す勇気がありません。冬の間は御容赦願います。それがテキメンと叱られるのは分っているけれども。自分がズボラしたのだからお義理にも今年の冬重い風邪はひけませんからね。
十二月八日 (封筒なし)
十二月八日
四日づけのお手紙ありがとう。このお手紙には、いつかの手紙にかいた古い絵の中の男のひと、机の前にあぐらかいて坐っていて、外にはだしで立っている女のひとに、笑をふくんで、ものを云っている、そのひとの眼や口元にあった微笑が感じられます。いい気持になり、らくになり、その楽さは、日なたとともに、のんだ薬を工合よく体じゅうにしみわたらせ、苦みも、ほろ苦い暖かさとなります。どうもありがとう。いつも良薬に対しては謙遜ですが、こんどは、すこし作用がきつすぎて弱ったから大いに助かります。