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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

生活に責任を感じて、自分がまきこまれたりするのは間違いだと思うようになりました。Sももって生れたいいところは苦労しなかったからもっていたのだが、生活がフヤフヤでがたつき出すと、もう自分をまとめて行く力もない様です。本当の建て直しはしない流儀なのね。ガタガタでもたせるだけもたすという流儀。借家ね。

だから、自分は来年はますますきちんとして、ちゃんと自分の日程は守って暮し、気持を擾されたりして自分たちの生活の不秩序を来したりは決して致しますまい。

ごく甘えを失って観察すれば、ここの二人に対して、即効的ききめのある存在と自分をしよう、出来るように思ったりしたのが、私の自惚れです。価値の問題ではないのですからね。いらないものは、どんないいものでもいらないのだわ。いるでしょう? いる筈だわ、なんて気を揉むのは大甘ね。そして、それが全く必要のところに手がまわりかねる気分に乱されるなんて、何て愚かでしょう。こうやって、自惚れをはがされるのは笑止であり結構なことです。わるいものからも教訓があるという例だと思われます。私は謙遜に自分の力を知って、自分の一番大事なことを万遺洩なからんことを期して居ればよいのだわ。