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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
まだまだ苦しかった(頭が)と思うの。じっと字をかいていられなかったのよ。丁寧にかいていられず、何かにせき立てられているようでした。その上今思うと、体じゅうの筋肉が変だったのね。全くギクシャクしていたのだわ。ですから大事に大事にすっかり癒らなければなりません。瑞々しく柔軟に丸く心も体も恢復しなくてはなりません。この頃は、字にしろ落付いてこまかくかいて行くたのしさが出来て来て、それに堪えるだけの神経の調子になって来たのでしょう。でも、眼はけしからんの、何というのろまでしょう。原稿紙のマス目はまだ駄目です。
きょうは六十六度ほどで、曇ってもいるし、しのぎよいが、昨日は又八十度越しました。あついと実に苦しいのよ。肩や背に日光がさすと何とも云えず不快です。もう傘をさしています。冬の衣類前へ出しておいていただきましょうか。私は今月のうちにもう一度ゆきたいのよ。いずれ水曜か金曜ですが。私にとって少しは薬になる外出があったっていいわけのものではないでしょうか、文字どおりほかへはちっとも出ないのだもの。たのしみの外出なんてないのですもの。夜具やっぱり宅下げなさいますか? 私はあつくるしいのはやり切れないとは思うけれども、どれか一つだけ厚く綿の入っているのをおいておいていただきたいのだけれども。