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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
02 一九三五年(昭和十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,805 字 · 40 页
けさは十時頃おき、書きあげた原稿をナウカへ届けて、それからスエ子が三四日前から入院したケイオーへまわろうとしましたが、本屋を歩いたのでくたびれ、雨も降って来たのでそのままかえり、栄さんのところで新鮮な野菜をいっぱいたべ、家へかえりました。今は夜の十一時すぎであるが机の上の寒暖計は六十三度です。冬中この二階は隙間風がひどく四十度前後であった。でも私も今年は風邪をひかず、その事ではあなたの御自慢にまけません。私の方は健康だわしの励行が大分によい結果を示しているらしい様子です。この頃は、毎年のことであるが、どちらかというと疲れ易く、しかも眠い事と云ったら! それはそれは眠くて春眠暁を覚えずという文句を、実に身を以て経験中です。バカらしく眠いが、これは何か必要があるのであろうと思い、ゲンコを握ってグースーです。グースーと云えば、今度の稿料で私は自分のためには、辛うじてベッドを一つ買うことが出来ました。二階のこの間まで机を置いた方がこの頃は西日で眩ゆいので机は六畳へひっぱって来て、そちらにはベッドを置いております。ピアレスのベッドで三つに折れるの。低くてスプリングもよいから、仕事してくたびれるとそのまま体をよこにする事が出来て大いに能率的であるわけです。