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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
02 一九三五年(昭和十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,805 字 · 40 页
丁度午後のそういう時間が体操とかち合って、ここの学校の先生はさながら自分の肉体の柔軟さと力感と肺カツ量とをたのしむように空まで声をひびかせて、ソラソラソラ手をあげてハッ、ハッもう一ついきましょう、シッシッと。それは(アラアラ地震です、ゆれる、ゆれる。眠っていらしって知らないのでしょう?)活溌です。女の子が声を揃えて一、二とかけ声をかけたり、女の子が力をかっきりこめず、イー、ニー、と澄んだ声をそろえて〔後欠〕
四月十四日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 上落合より(はがき)〕
第十一信の(二) 太郎はこの頃それはチューチューとひどい音をさせて自分のゲンコを吸います。ちび公(プチショーズ)を今よんでいて、あなたが何となく少年時代をいろいろお思い出しになっただろうと感じました。『白堊紀』の小説はそれより後のことが書かれているわけですね、面白かった。楓の若芽の下に朱の房のような花が咲いている、楓の花というものは四月の今ごろ咲くのですね、私はさっき林町の庭を歩いて青い芽の美しさでボーとなるようでした。一九三五・四・十四日、これで終り
四月十八日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 上落合より(封書 まき紙に毛筆書 表に「戸籍謄本壱通領置」