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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
02 一九三五年(昭和十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,805 字 · 40 页
咲枝は後のことをいろいろ心痛して居りますが、太郎のお乳のことを考え、気をしっかりもって居りますから感心です。きょうは父がおなかをわるくして二階で臥床中。私は食堂でこれを書きます。風の音がストーブの中でボーボーいっている。
(2)先日腹巻はもうお送りしてあるように申ましたが、やっぱりこちらにありましたからすぐお送りいたしました。もう召していますか? 急にこう暑いので、私は少しあわてて居ります。いそいでセル、単衣羽織その他さしあげましょうね。御注文の本、一冊だけ品切ですが、二十日ほどたつと改版ができますからそれを入れましょう。
小学校のラジオで私はこの好季節をヒステリーになったから、目下しきりに家さがし中です、近所で。近々又おめにかかります。
[自注6]倉知の叔父――偶然同じ日に書いたこの二枚つづきのハガキが、この家から百合子が書いた最終のたよりになった。倉知の叔父――咲枝の父。
五月十日朝 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 上落合より(山下新太郎筆「海棠」の絵はがき)〕
五月十日、第十三信の副。
五月三日におめにかかってかえりましたら、午後四時すぎに倉知の叔父が六十九歳で死去いたしました。