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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
01 一九三四年(昭和九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,990 字 · 30 页
あなたは御存知ないことだけれども、一昨年の十月末から国男夫婦[自注12]がケイオー病院のそばに家をもち、私はずっとその二階で暮して居りました。その家は、林町の母[自注13]が本年六月十三日に肺のエソでなくなり、(私が臨終の僅か五分前に辛うじて淀橋[自注14]からかえって会う事が出来た後、)引はらって、国男夫婦は林町にかえりました。私は夏ごろはずっと歩けなかったし、心臓衰弱で毎日注射していたし、すぐに家をもつことは出来ず林町の二階の長四畳へテーブルを持ちこんで、十月以後は、文学的な感想や評論のようなものを相当沢山かき半年前よりは発展をとげたということで一般に好評でした。現代文化社というところで私の最近の評論感想集[自注15]を出すそうで、多分一月頃出版の運びになるだろうと思って居ります。本年一月の『文芸』にかいた「小祝の一家」という小説は三一書房という本屋から出たいろいろな人十七人の『われらの成果』という小説集の中に集録されました。その小説集には島木健作「癩」、平田小六という「囚われた大地」という長篇小説をかいた元隆章閣の人などもはいっているし、婦人作家では私のほかにいね子[自注16]、松田さん[自注17]なども居ります。