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ばくおう
獏鸚
海野 十三
「新青年」博文館、1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,493 字 · 33 页
ね、判るだろう。この金庫の上には、同じ金庫を硯う黄血社の巣窟があったんだ。暁団の秘密も一瞬にガス体にするつもりだった。……さあ出よう。もうこんなところには長居は無用だ」
帆村は私を促して外へ出た。
外には鮮かな若葉が、涼しい樹蔭をベンチの上に造っていた。もうすっかり初夏らしい陽気だった。ベンチの上で、帆村は莨に火をつけて、さも甘味そうに喫いだした。
「ところで帆村君、『獏鸚』はどうしたんだネ。一向出て来んじゃないか」
「はッはッ、『獏鸚』は出てこないさ」彼は愉快そうに笑いながら、「その前にあの暗号解読のことを話して置こう。僕がきっとここだというところまで解いて、それで駄目だったのは、あの『あらまそーお』云々を仮名文字のまま引繰りかえしたから失敗したのだ。それで日本式のローマ字に綴って、それを逆さにし綴りなおしてさ、それで漸く解読完了ということになったのだ。なぜそれに気がついたかというとね、言葉の音というものを逆に聞くと、子音と母音とが離れ離れになり、子音は隣りの母音と結び、母音はまた隣りの子音と結ぶということに気がついたからだ。アラマという音の逆はマラアではなくて、ローマ字を逆にした AMARA――アマラなんだ。