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げんかいなだみっこう

玄海灘密航

金 史良

「文芸首都」1940(昭和15)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,605 字 · 6 页

青空文庫

ぼろぼろでも洋服を着ていたからよかった。だが他の連中は白い着物を着たまま群をなして徨い歩く中に見付かって、再び送還されたのに違いない。私はとうとう密航を思い切らねばならなかった。

「じゃが今は内地も不景気でがして、屑屋も駄目じゃけん、内地さ行くなああきらめるがええ」と、彼は結んだ。

翌日の朝彼は郷里へ帰るといって、やはりぼろぼろの洋服で小さな包みを一つ抱え、釜山鎮という駅から発って行った。私は余りの心寂しさに、彼を親でも送るような気持で、遠くから手を振って見送ったが、この小さな鼻髭を持ったおじさんは今どこで何をしているのだろう。

その後私は北九州の或る高校に籍をおくようになったが、この地方の新聞には毎日のように朝鮮人密航団が発見されて挙ったという記事がのる。それを読んでいく時は、何とも云えない複雑な感情に捉われた。沿岸の住民がとても訓練を得て監視するために、稀の場合でなければ成功しないのである。あっちは命がけの冒険上陸とも云えるが、こちらは又こちらで必死になって上陸させまいと目を光らせている。僅か八つの小学生が学校へ行く途中、密航団を見付けて駐在所に告発したので表彰されたというでかでかした記事も稀ではなかった。