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たまとりものがたり
玉取物語
久生 十蘭
「別冊文藝春秋 第二十四号小説二十人集」1951(昭和26)年10月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,495 字 · 19 页
何千、いや何万、数えきれたものではなかろうてや。方々、如何、思召される。なんという無慙なこと。悪逆無道、酷薄無情、これ以上の地獄の沙汰はあろうずるまい。これが人間の貴い命を預る医者の精神であろうか。恥入った、赤面背汗のいたり、辛うて身悶えするばかりじゃ。其許らに言うているのではない。自らに語り聞かしておるのでござるじゃが」そう言うて、膝に手を置いてさしうつむいた。
皆々、おのれの心の中を見抜かれたような心地がし、粛然とし、打萎れ、つくづくとなり、その後で、力を合せて解剖の勉強に出精しようと誓い合ったことでござる。大槻、戸塚はもとより、竹内、林、また三宅も某殿のふぐり玉にかかわりあい、それぞれの見識にしたがって勉強しているわけであったが、皆がてんでにおなじような実検をしていても効ないことだから、各々の分担をきめ、それぞれの受持で知識を深めるほうがよいと言う意見が出て、あらためて持役をきめた。
伊東玄朴 差図役、相談役
戸塚静海 執刀
大槻俊斎 監察
竹内玄洞 施薬
林 洞海 助手
三宅良斎 同
そこで玄朴が言うには、「前野、杉田の両先生、その以前では山脇東洋が、人体の内臓に刀を入れたじゃが、どちらも構造を見識するにとどまり、のみならず扱われたは、どちらも絶死の屍であった。