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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

在线阅读岡本 綺堂《玉藻の前(たまものまえ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,703 字 · 261 页

青空文庫

だんだんあさり尽くした揚げ句に、翁はふと過日の杉の森を思いついて、念のために森の奥へはいってみると、婆は藻と同じようにかの古塚の下に倒れていた。しかし彼女は何者にか喉を啖い破られていて、とてもその魂を呼びかえすすべはなかった。葬いは近所の人たちの手を借りて、その明くる日の夕方にとどこおりなく済ませたと、翁も顔をくもらせながら話した。

千枝松も眉を寄せて、この奇怪な物語に耳をかたむけていると、翁はまた言った。

「わしの考えでは、それもみんな古塚の祟りじゃ。わしらがあの森の奥へむざと踏み込んだので、その祟りがわしの身にはかからいで、婆の上に落ちかかって来たのじゃ。婆めは塚のぬしにひき寄せられて、あの森の奥に屍をさらすようになったのであろう。千枝まよ、お前もまんざら係り合いがないでもない。婆めはあの丘の裾に埋めてある。暇があったら一度はその墓を拝んでやってくれ。生きている間は仇同士のようにしていても、死ねば仏じゃ。どうぞ回向を頼むぞよ」

こう言っているうちに、翁はだんだんにふだんの笑顔にかえった。しかし千枝松は笑っていられなかった。俄に物の祟りということが怖ろしくなってきて、さらでも寒い朝風に吹きさらされながら彼は鳥肌の身をすくめた。