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げんだいのさじゅつ

現代の詐術

坂口 安吾

「個性 第一巻第一号」思索社、1947(昭和22)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,471 字 · 25 页

青空文庫

私は中世は好きではない。隣組のタバコ座は好きではないのだ。私がかのオバサン座に常に惨敗のウキメをみたヒガミではないのである。

然し、窮すれば、中世になる。この転落を防ぐ真に実力ある方法は、目下のところ、モラルや理論ではどうにもならず、窮しなければ中世にならない。それ以外には外に方法もないように見える。

窮すれば中世になるということは、察しなければならないということで、だから目下、ヤミ屋は中世ではなく、常にブルジョアには中世の精神は分らない。不思議にも、ブルジョアならぬ私、常に窮していた私が、尚かつ平和時代に於ては中世の精神をさとるに至らなかったとは、まことに意外千万だ。

私は然し、常に窮しながら、あえて中世に節を屈しなかった私の方に、いくらか取柄があるのだと考える。

一方的に自分の利益だけを主張する、ということには、これを自分一人でやる場合には非常に勇気がいるのである。ところが徒党を結んでやる場合には、全然勇気がいらない。

孔子もキリストも古代の思想で、これは人間一個自立自存の思想であるから、勇猛心を代償として尚かつ我利我利妄者であるべきかという豪傑と仁義に関する思想であり、さすがに中世ともなれば進歩したもので、勇気などは始めからもうアパパイで、狡智、策戦、たちどころに徒党を結んで、商人は商人の座、工