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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

天草次郎は、ふと夢からさめたように首をあげた。そしてスックと立ち上った。彼は一歩前へ出た。

「オオウ!」

ジャングルの猛獣のような唸り声を発した。

「オオウ!」

もう一声。

「ありがたし。ありがたし」

彼はガバとひれふした。

「尊し。尊し」

彼の全身ふるえている。

「マニ妙光。マニ妙光」

頭上に手をすり合わせる。狂おしい有様である。ふと頭をあげて、光秀と半平を見すくめて、

「コラ! お前ら、ボンヤリするな。あれが見えぬか。あれが聴えぬか。尊いお声がきこえているぞ。なぜ拝まぬか」

必死の形相に打たれて、光秀と半平もハッとひれふすと、

「マニ妙光。マニ妙光」

頭上に手をすり合せはじめる。

ひとしきり拝し終って、次郎はキッと端坐して、お歴々に一礼し、

「長らくの不敬、まことに申しわけありません。ただ今、神様の出御を拝し、さいわいに、不敬の段、お詫び申しあげましたところ、お許しをうけ、おききの如くに尊い神示を拝しました。これもひとえに皆様の慈愛によるところ、厚く感謝いたします」

神様の使者たちも、こう先を越されては勝手がちがう。しかし、さすがに落付いたもの、スキは見せない。