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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

天草商事の下に「天草ペニシリン製薬」だの「天草書房」だの「天草石炭商事」だのと十幾つとなく分類がある。

すでに五十年配の求職者が十人ほどつめかけていたが、みんな戦災者引揚者というウス汚れた風采で、一帳羅のモーニングをきこんできた正宗菊松先生ほど、高潔なる人格を風貌に現している者はなかったから、ウム、これはシメタ、とほくそえんだ。こゝまでは、よかった。

いよいよ彼の番がきて、社長室へ通される。大きな社長室のまんなかのデスクに、二十三四のチョコ/\した小柄の青年が腰かけている。全然青二才であるが、その左右に腰かけているのが、まったく同類の青二才なのである。

青二才の一人が履歴書をとりあげて目を通しながら、

「ハハアン。××学校の歴史の先生かア。じゃア、あなた、柴野ッてヨタモンみたいな奴、知ってるだろ? いま銀座でダンスの教師やってやがら」

薄笑いをうかべて呟いたが、それから、眉をよせて、真剣らしい顔付になった。

「歴史の先生じゃア、あなた、ソロバンは、できないでしょう。うちじゃア、実直な会計係がいるんですけどね。歴史じゃアねえ。前職が先生ッてのは、まア、いゝんだけど」