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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

百万円耳をそろえて献上すると正宗の身柄を引渡してつかわすと言うとる」

「ハ、百万円」

「ウム」

親分は言葉をきって、ウイスキーを一呷り、ついでに、盤面に目をくばる。

「天草鉱業はどこに鉱山をもっとるか」

「エエ。常磐に炭坑三ツ。常磐では指折の優秀炭質を誇っております。七千五百から八千カロリー。八千五百ぐらいまでありますんで、一噸いくらだったかな。一貨車いくらでもとめるのが御徳用で」

「天草製材はどこに工場を持っとるか」

「エエ。秋田でござんす。そもそもこれが、わが社社長の実家でして、社長は当年二十五歳、ボクと同年の大学生で、天草次郎とおっしゃるニューフェースで」

「オヤジが追放くったのか」

「とんでもない。当商事に於きましては、社長のほかに業務部長の織田光秀、編輯長の白河半平、重役陣の三羽ガラスがいずれも大学生でござんす。エエ。ボクも近々重役になります。戦前派は無能でいけません」

「製材所が秋田じゃア都合が悪いな。しかし新興商事会社はヤミ屋にきまっとるから、扱えないという品物があっちゃア名折れだ。実はな、オレが商用で箱根へくるのは建築用材の買いつけだ。すでに一年半にわたって用材を伐りだしとる。