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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

サルトルはアゴをなでて笑っている。

雲隠才蔵も考えた。たしかにサルトルはたゞ者ではない。天草次郎は冷血ムザン、腹にすえかねた仕打ちをうけたのは今度に限ったことではない。ムホン気は充分そだっているけれども、敵は名だたる今様妖術使いで、残念ながら歯が立たない。つらつら打ち見たところ、サルトルは胆略そなわり、慈愛もあり、底の知れないところがある。おまけにウスノロのところもあるから、利用するだけ利用して、まんまとせしめてやるのも面白かろう。だましてやるには手ごろの勇み肌のニューフェースなのである。才蔵はこう肚をきめて、

「じゃア、それで、いってみようじゃないか。オレは退屈しているんだ」

「明日、むかえにくるぜ」

サルトルは一万円の札束を無造作につかみだして握らせて、

「悪い病気をもらうなよ」

と、ニコヤカに行ってしまった。

翌朝、才蔵をむかえにきて長範の前へつれて行った。

「エ、才蔵をつれて参りやした。見かけはチンピラでざんすが、ちょッとまア愛嬌もあって、小才もきくようでござんす。目をかけていたゞきとうざんす」

長範はゴリラの熊蔵と将棋をさしていた。

「才蔵いくつになる」