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げんだいにほんのしそうたいりつ

現代日本の思想対立

戸坂 潤

「現代日本の思想対立」今日の問題社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,540 字 · 245 页

青空文庫

之こそ人心の惑乱と云うものかも知れないのだ。

惑乱、紊乱、攪乱という風に、うまく別々で而も似たような乱し方が並べられているが、そういう対句めいた作文で処罰される人間こそいい迷惑だ。そうなると立法も一種の道楽のようなものかも知れぬ。

処でこの「人心惑乱」が就中難解なことには理由があるので、之は実は例の「流言浮説」という物と関係があるのである。処が治安を妨害すべき流言浮説というものが又判らないものなのだ。――私は二・二六事件発生の当時から実に様々な流言浮説(流言飛語という術語もあるらしい)を耳にした(但し私は決して口にはしなかったことを断わっておく)。無論根も葉もないのもあるにはあったが、大体の輪郭に於て、後に判った「真相」らしいものと、よく一致していたのに驚いた。

それ以来私は流言飛語というものに対して、各新聞に画一的に掲載されるニュースとは又別の念を懐くようになったのである。そして而もこの私が耳にした流言浮説はどれも決して治安妨害的でないものではなかった。

それはまあ好いとして、真相を語る流言浮説と真相を伝えない流言浮説とがあるということを、私はその時、実験的に確め得たわけなのだ。