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げんだいにほんのしそうたいりつ

現代日本の思想対立

戸坂 潤

「現代日本の思想対立」今日の問題社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,540 字 · 245 页

青空文庫

吏道というものも、この判ったようで実は少しも判っていない極めてルーズな観念の一つに他ならないのだ。

広田声明全体が、既成乃至急造のルーズな観念の甚だ頭の悪い羅列に過ぎないことは、声明発表当時、すでに世間がそれとなく感得して不満の意を表した処であるが、併し大事な点は、声明内容のこの杜撰振りが広田内閣乃至広田内閣を成立させ操縦する処のものの要求から云って、絶対に必要なのだということである。ただ単に、こんな粗笨な声明をしたのではなくて、そういう粗笨さを必要とする哲学(?)があるからなのだ。

この哲学はかつてアジア大陸に王道なるものを唱え又実施すると号した。その創業と守成とがどういう現実に終ったかを私は審かにしない。がとに角この哲学は「道」を説くことを最も好む哲学と見える。官吏があれば即ち吏道という観念を創始する。澆季の世に於ては道を聴くことの如何に易いかを思わざるを得ない。今日では晨に一つ道を聞いただけでは夕べに死ぬ気には容易になれぬ、と云わねばならぬ。

潮内相は地方長官に訓示して「一身を君国に捧げ公明なる心事と中正なる態度を以てその職に精進すべきは吏道の第一義たり」