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げんじつとぶんがく

現実と文学

宮本 百合子

思意的な生活感情

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,541 字 · 5 页

青空文庫

しかしながら、散文精神の発足にやはり時代のかげが落ちていて、芸術が現実へ働きかけてゆく面からそれが云われず、どちらかと云うと、現実の反映としての小説をより見たことは、散文精神が、市井風俗小説を多産するに至ったことで裏づけられている。

先達てうち、再び散文精神ということがとりあげられた。それは要するにその点の再吟味であり、散文精神が今日の文学の受動性の枠づけとならぬよう、文学のリアリティーを風俗小説の範囲にとじこめぬよう、そのことが論ぜられたのであったと思われる。

この二三年来、各作家はめいめいの個人の生きかたというものに、これ迄とちがった腰の据えかたをしており、そこでの実感というものが、文学の上で多くのものを語る因子となって来ている。そのこととして、これはもとよりわるいことでないし、一種の政治性で文学が吹きまくられ一律化されようとした危険のあったとき、それは必然に作家の文学というものへの本能から生じた文学の成長を護る態度であった。

だが、生活の実感、生ける姿というものはどういうものなのだろうか。

私はよく思うのだが、例えば、現代の日本の生活感情・文学の実感のなかで、今日現実に多くの人々が心に抱いて生きている思意的な感情というものは、どう生かされ描き出され人生に評価されているであろうか、と。