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こはくのパイプ

琥珀のパイプ

甲賀 三郎

「新青年」1924(大正13)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,109 字 · 37 页

青空文庫

青木は云った。「表を廻れば少し遠くなりますから、福島の庭を脱けて私の裏口から入ろうとしますと、台所の天井から赤い火が見えましたのじゃ。それで大声を挙げたのです」

「庭の木戸は開いていたのですか」検事は訊いた。

「夜警の時に、時々庭の中へ入りますでな、木戸は開けてある様にしてあるのです」

「火を見付ける前に見廻りをしたのは何時頃ですか?」

「二時少し前でしたかな、松本君」青木は松本を振り返った。

「そうですね。見廻りがすんで、小屋に帰った時が五分前ですから、この家の前であなたに別れたのは十分前位でしょう」

「この家の前で別れたと云うのはどう云う訳です?」

「いや一緒に見廻りましてな、この前で私は一寸宅へ寄りましたので、松本さんだけが、小屋に帰られたのです」

「矢張庭をぬけましたか?」

「そうです」

「その時は異状なかったのですね?」

「ありませんでした」

「何の用で帰ったのですか?」

「大した用ではありません」

その時に警官が検事の前に来た。検死の結果殺害が凡そ午後十時頃行われた事が判ったのである。小児の死体は外部に何の異状もないので解剖に附せられる事となった。同時に菓子折も鑑定課に廻わされた。