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こはくのパイプ

琥珀のパイプ

甲賀 三郎

「新青年」1924(大正13)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,109 字 · 37 页

青空文庫

彼が何が何やらさっぱり判らない中に、店の番頭達はこの方に相違ありませんが、別に何も紛失したものはないと答えた。次に時計店に連れて行かれた時分に、岩見も漸く少し宛判って来た様な気がした。時計店の番頭は彼をみるや否や、この野郎に違いありませんと云った。刑事――この大男は無論刑事であった。――は早速岩見の身体検査をはじめて、腰のポケットから一つの指輪を取り出した。それは実に見事に光っていた。

「余り見かけない奴だが」刑事は岩見に向って云った。「素人じゃあるまい」

「冗談云っちゃいけません」これは大変になって来たと岩見は懸命に云い出した。「何が何だかさっぱり判りません。一体どうしたのです」

「オイ/\、好い加減にしないか」刑事は云った。「お前はカフス釦を買ったり、時計を買ったり、それはいゝさ、ついでにダイヤ入指輪を一寸失敬したのは困るね、然しいゝ腕だなあ」

「私は時計も指輪も買った覚えはありません」彼は弁解した。「第一金を調べて下されば判ります」

彼が自分の潔白を証明しようとして、内ポケットから月給の袋とボーナスの袋を出したが、彼は顔色を変えた。封が切れていた。