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こはくのパイプ
琥珀のパイプ
甲賀 三郎
「新青年」1924(大正13)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,109 字 · 37 页
夜警団の唯一の利益と云うべきものは、山ノ手の所謂知識階級と称する、介殻――大きいのは栄螺位、小さいのは蛤位の――見たいな家に猫の額よりまだ狭い庭を垣根で仕切って、隣の庭がみえても見えない振りをしながら、隣同志でも話をした事のないと云う階級の、習慣を破って兎に角一区画内の主人同志が知り合いになったと云う事と、それに各方面から避難して来ている人々も加わって来るので、いろ/\の職業に従事している人々から、いろ/\の知識が得られると云う事であろう、――然しこの知識はあまり正確なものではないので後には「あゝ夜警話か」と云ったような程度で片付けられるようになったが。
青木は年輩は私より少し上かと思われる人だが、熱心な夜警団の支持者で、兼ねて軍備拡張論者である。松本は若い丈けに夜警団廃止の急先鋒、軍備縮小論者と云うのであるから、耐らない。三十分置きに拍子木を叩いて廻る合間にピュウ/\と吹き荒んでいる嵐にも負けないような勢で議論を闘わすのであった。
「いや御尤もじゃが」青木大佐は云った。「兎に角あの震災の最中にじゃ、竹槍や抜刀を持った自警団の百人は、五人の武装した兵隊に如かなかったのじゃ」