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びわこのみず

琵琶湖の水

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」1947(昭和22)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,773 字 · 20 页

青空文庫

ところがそれが「独立して自由国になる」ほどの大事件なのなら、うかうかとしてはいられない。戦争には敗けてもやはり日本国民の一人でありたいので、エゾ国の国籍をもつようになるのだったら、今のうちに内地へ引き揚げねばならないからである。

それでこういうことに詳しい友人の一人X君にきいてみたら、馬鹿な話さと一笑に付されてしまった。「何億という自由になる金があれば、いろいろいいこともあるさ」と相手にしない。自由になるというのは、もちろん誇張であるが、かなり融通の効く性質のものではあるらしい。従来も拓殖費というものが北海道開発の癌だという説と、生命の綱だという説と二つあった。X君のような口の悪い男ならば、それくらいのことは言うかもしれなかったのである。

要するに、綜合と分割とは、この程度の騒ぎを起した事件なのである。そして敗戦後の日本の再建には、北海道の開発が残された少数のホープのうちで、筆頭に挙げらるべき問題である。一北海道の話ではなく、国家的の問題なのである。ところでこの国家的の大問題の中に、ひょっくり琵琶湖へ小便類似の話が顔を出したので、一寸愉快であった。