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びわこのみず

琵琶湖の水

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」1947(昭和22)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,773 字 · 20 页

青空文庫

当局の方では躍起になって、割当量を供出しない者には官林の払下げをしないと造材屋どもをおどかして、大いに薪の生産に努力された。事実造材師は、建築用材まで三尺に切って、割当量を完納したのである。それでも都市の方には、薪は一向姿を見せない。輸送の困難というのが一つの理由であるが、その言葉は実に抽象的な言葉なのである。最近この方面の組合の幹事の人に聞いた話では、北見方面から千石送った薪が、札幌へは八十石しか着かなかったそうである。そういういろいろな輸送の困難があるわけである。もっとも本当の困難もあるので、薪が一つの沢いっぱいを埋めて、下積みの方はとっくに腐っているというような景色もいくらも見られる、御希望ならいつでも御案内しましょうという人もある。

理由は何であれ、とにかく困るのは、都市の住民である。札幌市でも、到頭我慢が出来なくなって、円山の天然記念物になっている原始林を伐り払って、市民に薪を供給しようという案が出た。昨年の十月のことである。札幌市燃料対策委員会が決定した案とかいう話で、早速林業課に申し入れがあったそうである。

北海道でも、乱伐の結果、この頃では原始林などというものは、そう簡単には見られない。