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せいあらば
生あらば
豊島 与志雄
「文章世界」1917(大正6)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,046 字 · 47 页
「光子がもし助かるとすれば、皆あなたのお蔭です。」
羽島さんはそう云って淋しい顔をしながら箸を取り上げた。その言葉に小母さんがじっと眼を伏せている。
何という卑下であろう、そして其処には亦生活の疲れと長い心労とがあった。然しそれはまた一層濃い色を以て壮助自身のうちに返って来た。彼は羽島さんの姿を、色艶の悪いその顔を、仰ぎ見るようにした、助けを求めるような心で、百円を与えたことをはっきり意識した心で、そして……その返済を求むるような心で。
壮助は座に堪えられないような気がした。そして病室に入ると、光子が急に大きな眼を開いて彼の顔を見た、そして口元に無心な微笑を漂わした。その側に坐って、彼は顔をそむけて涙をはらはらと落した。
看護婦が座を立った時、光子は急に壮助の方に顔を向けた。
「津川さん、なぜ泣いたの。」
壮助は光子の眼をじっと見返した。そして頬の筋肉がぴくぴく震えてくるのを感じた。
「なぜ泣くの。」光子の眼附がまたそう云った。
「光ちゃんがね、早くよくならないからつい悲しくなったのだよ。」
「あたしそんなに悪くはないわ。」
「ですから早く滋養分を取って元気をつけなければね……。